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​研究/RESEARCH

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​Pulsar(パルサー)

 強い磁場を持ち、高速で回転するパルサーは、星が一生を終え超新星爆発した後に残った中性子星が正体であると考えられます。極めて安定した周期性を持っており、その安定した発光間隔から宇宙の灯台とも呼ばれています。また、電波からX線までの幅広い周波数にわたって電磁波を放射しています。しかし、その電磁波放射のメカニズムは未だに定説がありません。そこで、パルサーの同時広周波観測を行い、それぞれの周波数のスペクトルを見ることで、パルサーの放射メカニズムや、その性質の解明を行っています。

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Gravitational Wave​(GW:重力波)

 アインシュタインの提唱した一般相対論から予言される時空の歪みの波である重力波は、2015年9月アメリカの重力波望遠鏡LIGOによって世界で初めて直接検出が行われました。さらに研究が進み、今世紀最も発展が期待される分野の一つとなっています。

 私たちの研究室では、電波望遠鏡によるパルサーの観測から重力波の検出を目指しています。実際のパルサー観測や将来の観測による重力波検出の​可能性を見積もるシミュレーションなどを中心に行っています。

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Parkes Telescope
&
Square Kilometre Arrays(SKA)

 私たちの研究室は次世代型大型電波望遠鏡Square Kilometre Array(SKA)に関する研究を行っています。研究室内でも大きく3つの分野に分類され、宇宙磁場、宇宙再電離期、パルサー/重力波のグループがあります。すべての分野でSKAに関する研究を行っています。

​私たちパルサー/重力波グループでは、世界最高感度を誇るオーストラリアのParkes電波望遠鏡を用いた観測やデータ解析を行っています。パルサーのデータから重力波を取り出す解析法の開発を行っています。

​自分自身の研究/ MY WORKS

  1. 超低周波重力波の検出法の開発
    身近な電磁波は周波数によって全く異なる性質を持つことは、みなさんご存知ですよね?
    ものが見えるのは、太陽や照明から発した可視光がものに反射して目の中に入ってきます。種類によって、観測方法も異なります。光の望遠鏡は天体望遠鏡、電波はパラボラアンテナ、x線等の高周波電磁波は、地上では大気の影響を受け、衛星からしか観測できません。同様に、重力波も周波数によって異なる検出手法が必要となります。


    LIGOによって検出された重力波は、恒星質量のブラックホール連星が放射する100Hz程度の高周波の重力波です。恒星質量のブラックホールは、星が死んだ後の超新星爆発によってつくられることがわかっています。2019年にはEHT(イベントホライズンテレスコープ)が、史上初のブラックホールの撮像に成功したことを発表しました。ここで撮影されたM87内のブラックホールは、太陽の数十億倍もの質量を持った超大質量ブラックホールであることがわかりました。

    ここで、一つの疑問が浮かびます。

    太陽の数十億倍もの質量を持つ超大質量ブラックホールは、どのようにしてできたのでしょうか?
    一説として、銀河中心に存在するブラックホールが銀河衝突に伴って合体し、より大きなブラックホールへと進化していくことが考えられていますが、観測的証明はされていません。
    この問題の解決の鍵は、「重力波」です。重力波を放射するブラックホール連星はその質量等のパラメータによって異なる周波数の重力波を放射します。典型的には、重くなればなるほど低い周波数の重力波を放射します。そのため、LIGOの見つけた重力波より低い周波数の重力波を観測する必要があります。

    超大質量ブラックホールの連星が放射する重力波はnHz(10^-9Hz)に相当します。このような低周波重力波を検出する手法としてパルサーと呼ばれる天体を精密に観測する「Pulsar Timing Array (パルサータイミングアレイ)」と呼ばれる手法を用います。

    パルサーは強い磁場を持ち、高速回転する中性子星(中性子でできた星、質量がさほど大きくない星の超新星爆発後に形成される)です。典型的に、10kmの半径で太陽質量と同程度の質量を持った高密度な天体です。特筆すべき特徴は、
    非常に安定した周期でパルスを放射しているということです。この周期の安定性は、地球上で最も安定した指標である原子時計よりも安定しています。

    もし、重力波が存在してれば、地球とパルサー間の距離が変化し、正確であるはずのパルスの到来時刻が規則性からずれます。この時刻のずれを精密に測定することで重力波を検出することができます。

    しかし、パルサータイミングアレイも完璧ではありません。
    パルサータイミングアレイで観測可能な周波数は nHz 〜 μHzの重力波を観測しますが、この周波数は超大質量ブラックホール連星が合体する直前(最終段階)に相当します。連星を成したばかり(初期段階)を知るためには、より低周波の超低周波重力波を観測する必要がありますが、従来のパルサータイミングアレイでは検出することができません。(理論的には可能ですが、現実的には不可能)


    そこで私たちは、重力波がパルサーの周期の変化率に与える影響を定量的に見積もって、その統計的な性質を評価することによって、重力波の振幅やブラックホールの質量に制限を与える研究を行っています。

    この研究は既にほぼ完成しており、現在観測されているパルサーデータを利用した制限 ( 研究実績/論文2 )や、SKAの観測を見越した3000このパルサーデータを用いた制限
    ( 研究実績/論文5 )、さらに、その3000このパルサーが現実的な偏りを持った分布をしていた時の制限( 研究実績/論文3 )などあらゆる条件を考慮しています。


     

  2. 新しいパルサー候補の選定
    パルサータイミングアレイでは、未だに重力波は検出されていません。世界中に3つ存在するパルサータイミングアレイによる重力波の検出を試みるグループ(オーストラリア : Parkes PTA、ヨーロッパ : European PTA、アメリカ : NANO Grav) は僕が研究を始めてからずっと「もう直ぐ検出できる。」と言い続けています。

    では、なぜパルサータイミングアレイでは重力波が検出できないのでしょうか?

    その答えは非常に簡単です。パルサータイミングアレイに利用可能なパルサーの数が極めて少ないからです。
    この文章を書いている現在(2019年6月現在)、パルサーは2703個見つかっています。そのうち、パルサー内で特にパルス周期が安定している周期が短いミリ秒パルサーの数は379個しかありません。ミリ秒パルサーの中にも使うことができないパルサーがあります。不規則な固有運動を持っているパルサーがもちろん存在します。そうするとパルサータイミングアレイに本当に利用できるパルサーは高々数10個程度になってしまいます。これだけ標本数が少なかったら検出できないことも納得できるはずです。

    そこで、新たなパルサーを未同定天体のカタログの中から探します。
    ここでは、パルサーの特徴を利用してパルサーの候補をカタログ内から選び出します。
    数10万個の電波源の中から37個の新たなパルサー候補を選定しており、オーストラリアの Parkes 64m望遠鏡の観測時間を確保しています。
    (proposalと呼ばれる計画書を提出して、観測時間を競争的に取り合います。実際に喧嘩するわけではありません。)

    実際に、望遠鏡を動かしての観測や観測データの解析を行い、本当にそれがパルサーかどうか検証します。

    ここで、新たなパルサーを発見することができれば、日本人初の偉業となります。乞うご期待!!!!
     

  3. パルサー定期モニタリングのデータの解析
    最近始めたばかりの研究ですが、Parkes望遠鏡の他のプロジェクトにも参加しています。
    2004年から始まった300個ものパルサーの定期観測を行う研究です。1か月に1度300個のパルサーを、典型的に5分間観測していきます。

    この観測は、パルサー研究の中でも非常な役割を担っています。

    パルサーが変わりなく、輝いているか確認(定期検診みたいなこと)を行ったり、望遠鏡のcheck(calibrationと呼ばれる)を行うことにも利用されます。

    さらに、パルサーから発せられた電波放射は星間空間に存在する星間物質(分子ガスやプラズマ)を通過して伝播します。
    その際、その星間物質によって様々な影響を受けます。

    例としては、scattering(散乱効果)、dispersion(分散効果)、pulse broadening(パルス幅が広がる効果)やscintillation(星が瞬いて見える効果)、などが挙げられます。これらの効果は、星間物質の分布モデルを仮定すると、数学的にどの程度影響を受けるか計算されますが、モデルと観測を擦り合わせて検証する必要があります。

    本定期観測では、scintillationに着目し、星間物質のモデル(ここではKolmogolov乱流モデル)との整合性を検証します。

    私自身もプロジェクトの一員として、観測の一部を受け持ち、Parkes望遠鏡を動かして観測を行い、主な業務としてはデータ解析を行っています。

    現在は、論文を執筆中です。( 研究実績/論文1 )

    詳しくは以下の"Research Achievement"ボタンから詳細をご覧ください。

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